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『剣道家族』
秋田県秋田市
雄信館内山道場
小学六年生

 

玉木直哉

 

僕の「剣道家族」を紹介します。体の弱い兄が3歳の時、雄信館内山道場で剣道を習い始めたのがきっかけで、姉も3歳から、父は38歳から剣道を始めました。当然のように僕も兄や姉といっしょに3歳から道場に通うようになりました。
現在、兄は大学のサークルで、姉は高校の部活で剣道を続けています。父は医院の仕事を終えると一目散に道場へ出かけ、僕たちといっしょに大きな声を出し汗を流します。最近は仕事が忙しく週に二回しか稽古ができず不満な様子です。38歳から始めた父の剣道は決してかっこいい剣道とは思えません。でも家族の中では一番稽古好きで、一番稽古熱心です。道場で僕たちと稽古するのが楽しくてしかたがないといった様子です。兄や姉から技を教えてもらい年に一度、仕事仲間の剣道試合に出るのが楽しみだと言っています。そんな父の剣道も今年で12年目になります。稽古中はいつも「直哉、3本勝負!!」と言ってきます。最近はいろんな技を使い僕を負かそうとしますが、僕も負けてはいません。父の一番弱いコテ、ドウをねらいます。お互い意地っぱりなのでなかなか「自分の負け」を認めようとしません。僕は「これでもか、これでもか!!」と打っていくと、最後に父は「まいった」とニッコリ笑って頭をペコリと下げてくれます。そして「直哉、強くなったぞ!!」とはげましてくれます。父は僕の試合をよく応援しに来てくれます。試合前に緊張していると「恐がるな、相手に勝つと思うな、稽古の時のように堂々と直哉の剣道をして来い」と言って背中をドンとたたいてくれます。そんな時の力強い言葉で勇気がわいてきます。父の剣道は、上手な剣道ではありませんが、一生けんめい稽古を続ける「熱心さ」に学ぶことがたくさんあります。僕の母は剣道は全くできませんが僕たちの剣道を小さい時から見守ってくれました。道場通いは20年間なので剣道の事には、少しうるさい名マネージャーです。いつも厳しい目でしかってくれたりやさしくはげましてくれたり応援してくれる母に心から感謝しています。
家族そろった夕食時間にはだれかれとなく剣道の話が飛び出します。試合が終わった日などには、みんなでビデオを見て良い所、悪い所などを話し合います。そんな時間が、一番楽しく剣道をやっていて良かったなあと思います。また明日から、がんばろうという気持ちになります。
去年の夏の感動は一生忘れないことでしょう。全国錬成大会で、5人の仲間がブロック優勝できたことです。まさか優勝できるとは思ってなかったので、本当にうれしく体がふるえてきました。剣道を続けていて本当に良かったとその時心から思いました。
館長先生はいつも「ひとつの事を投げ出さずこつこつと努力すればいつかむくわれる。」とおっしゃいます。ひとつの事をこつこつ続ける大切さがこのごろようやくわかりかけてきました。
父の熱心な稽古を見、兄や妹の苦しい稽古の話を聞くたび、ひとつのことを続けるということは「本当に大変なことなんだなあ」と思います。苦しさに耐える強い心、他人に対するやさしい思いやり、そして、いつも感謝の気持ちを忘れない人間になれるようこれからも、剣道を通して学んでいきたいと思います。

 

 

 

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